前回の記事(スタートアップ企業と資金調達について)では、スタートアップ企業の資金調達について簡単な説明をさせて頂きました。今回の記事では、スタートアップ企業や中小企業がどのようにすれば、金融機関からの資金調達(借入)が出来るのかについて説明させて頂きたいと思います。例えば、同規模で同じような事業の展開を考えているA社とB社があるとします。A社はうまく金融機関からの借入が出来て事業を順調に拡大している一方、B社は金融機関から借入が出来ずに事業展開に苦しんでいる。このような事例は良く見かけます。なぜ、A社は借入が出来、B社は出来なかったのでしょうか。以下では、金融機関からの借入に必要な要素について説明させていただきます。

 

1.  事業計画書

まず必要になるのが事業計画書です。事業計画書というと難しい印象を持たれる方もいるかと思いますが、簡単に言うと今後の事業の見通しを数字(売上・利益)の形で示すということです。ただし、単に数字を示せば十分というわけではありません。その数字がなぜ実現できるのかという前提条件も合わせて示す必要があります。売上・利益の数値及び前提条件が出来上がったら、次に考えるべきことは、事業内容の説明と合わせて、数値及び前提条件を如何に理解してもらいやすいようにどのように説明するかという点です。目的は金融機関からの借入実行ですので、金融機関の担当者が理解し、銀行内部で決裁を取りやすい資料を作成することが重要です。あまりに簡単なものでもダメですし、あまりに複雑すぎて理解できないものでもダメです。どうしたら金融機関が融資しようと思えるかという視点が事業計画書の作成では必要ということです。

金融機関からの資金調達サポートの実績が豊富な当事務所にご依頼頂ければ、それぞれの企業にあった最適な事業計画書の作成をお手伝いさせていただきます。

 

2. 金融機関の選定

事業計画書が完成したら、次に検討すべきは取引金融機関の選定です。会社の近くの金融機関の支店で良いのではと考える方が多くいられるかと思いますが、金融機関の選定は慎重に検討すべきです(ある程度の地域的な制約はありますが、柔軟に対応してくれる金融機関も多くあります)。同じ事業計画書を持参しても、金融機関毎、支店毎、更に言うと担当者毎によっても対応が異なるのが実情です。きちんと事業内容や事業計画書を理解して的確な稟議を作成してくれる担当者に巡り合うというのが、事業計画書の作成と同じぐらい重要になってきます。

先般、あるスタートアップ企業の経営者の方が、地元の税理士の先生に教えてもらった2つの金融機関を訪問したら対応が良くなく、銀行口座すら開設できなかったということで、当事務所に相談に来られました。その企業は、海外との間で食材の輸出入取引をメインに行っており、少し複雑な取引形態もあったためか、訪問した金融機関の担当者が良く事業内容を理解できなかったようです。そこで、当事務所で接点があり、この企業にきちんと対応してくれそうな金融機関の担当者を選定して紹介したところ、直ぐに口座を開設でき、金融機関内の審査も順当に進み、必要な事業資金の融資も獲得することが出来ました。

 

3. 経営数値の管理体制の構築

事業計画書の策定、金融機関との交渉に時間がとられる中で、経営数値の管理体制の構築まで目がいかないのが経営者の方が時々おられます。経営数値とは月次決算を含めた決算、資金繰表、その他の重要な経営数値になります。これらの数値がタイムリーに、かつ金融機関に理解しやすい形で作成される必要があります。

融資獲得という目標を達成するのが優先課題ではありますが、融資獲得で金融機関との付き合いが終わるわけではなく、むしろ今後長い付き合いがはじまっていくことになります。金融機関は審査の過程で、経営数値の管理体制がどうなっているかも気にしていますし、将来的な次の融資を獲得していくにも体制の構築が必要になります。社内にそれなりの人材を置けない場合には、会計士・税理士等の専門家の力を借りることになるかと思いますが、その場合には、決算書や税務申告書の作成といった基本的な内容だけでなく、事業の内容をしっかり理解し、金融機関向けの諸々の資料を作成できる専門家を選定されることをお勧めします。

 

上記の3つの項目に関して、各企業の実態に合わせた、より詳しい説明が欲しいという方は、ぜひ当事務所までご連絡ください。